『ソヴィエト文明の基礎』のレビュー

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みなさん、こんにちは。今回はアンドレイ・シニャフスキー著、『ソヴィエト文明の基礎』のレビューを書きたいと思います。この本はとても分厚く、取っ付きにくい印象を抱くかもしれません。しかし、それは外観だけ。翻訳がしっかりしているので、サクサクと読み進めることができます。それでは、感想文、紹介文をつらつらと書いていきます。

① そもそも『ソヴィエト文明の基礎』の著作、アンドレイ・シニャフスキーとは

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まずは『ソヴィエト文明の基礎』の著作を見ていきましょう。シニャフスキーは1925年生まれ、ソビエト現代文学を研究するかたわら、文学作品も発表していました。契機となったのは1965年のこと。同年にシニャフスキーの序文がついた『ボリス・パステルナークの詩と叙事詩』が発表されますが、同時に逮捕されています。

逮捕の理由は書かれていますが、パステルナーク自体が反ソ的と見られていたので、同じ流れでシニャフスキーも「反ソ的」とみなされたのでしょう。1966年に懲役7年の判決を受け、1971年にフランスに亡命しています。『ソヴィエト文明の基礎』は1989年にフランスで出版され、ロシアで出版されたのは2002年のことです。知識人らしい鋭い視点でソヴィエト社会をあぶりだしています。

② ソヴィエト社会がわかる『ソヴィエト文明の基礎』

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『ソヴィエト文明の基礎』の良さを一言でまとめるなら、ソヴィエト社会をすんなりと理解できることです。構成は以下のようになっています。

第一章:革命

第二章:実現したユートピア

第三章:レーニンの学者国家

第四章:スターリンの教会国家

第五章:新しい人間

第六章:ソヴィエト的日常

第七章:ソヴィエト的言語

第八章:民族問題

この構成を見て、興味深い点はレーニンとスターリンを別にしていることです。シニャフスキーはレーニンを学者、科学者のリーダーと捉えていますが、スターリンは「国家における神」としています。

レーニンは個人的名誉を欲しない学者タイプ。ただし、教義に反する行いには冷徹に対処した人物でした。一方、スターリンは権力欲むき出しの個人崇拝礼賛型のリーダー。教義を自己流に解釈し、ソビエト連邦を「奴隷国家」に変容させた、としています。平易な言葉を使いながら、鋭い視点が筆者の特徴だと思います。

また、作家らしく第七章のソヴィエト的言語では、ソビエト連邦で使われた言葉を丁寧に分析しています。ソヴィエト社会で使われた単語を丁寧に見ていくと、ソヴィエト社会の本質が理解できることでしょう。

基本的にソ連を批判的に見ていますが、ただ批判するのではなく、論理的に批判しています。また、読んでもらえばわかりますが、バランス感覚に優れています。社会主義圏に住んでいる人が「社会主義は宗教だった」というのも、この本を読めばわかるでしょう。

③ 『ソヴィエト文明の基礎』は誰におすすめか 

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『ソヴィエト文明の基礎』はズバリ、ソ連はもちろん、現代ロシアを知りたい方におすすめしたい本です。「今さらソ連?」と思われるかもしれませんが、現代ロシアとソ連とは少なからず連続性があると思います。

現代ロシアの不可思議なところはソ連時代の考えを踏襲していることが多いです。『ソヴィエト文明の基礎』を読めば、ある程度、納得することでしょう。

この本のコツはまじめに第一章から読まないこと。興味のある章から少しづつ読めばいいと思います。とてもわかりやすいので、あまりソ連のことを知らない方でも大丈夫です。ぜひ『ソヴィエト文明の基礎』を手に取って、現代ロシアの実態をつかんでください。ご感想をお待ちしております。


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