こんにちは、今回は少し硬めのお話。俗に言う「独裁国家」について考察します。とは言っても、ナチス・ドイツのような国家ではなく、今回取り上げるのは民主主義体制とはいえない国家です。それではボチボチと見ていきましょう。
民主主義体制と全体主義体制の間に位置する権威主義体制
民主主義体制といえば日本、アメリカ、ヨーロッパ諸国を思い浮かべるでしょう。一方、全体主義体制と聞けばナチス・ドイツを真っ先に挙げるのでは。
しかし、民主主義体制と全体主義体制の間にはどちらにも属さない政治体制があるのではないか・・・。このように考えたのがアメリカの政治学者リンスさんです。
リンスはフランコ時代のスペインを取り上げ、全体主義体制とは異なる政治体制、権威主義体制を提唱しました。それでは権威主義体制は全体主義体制と異なる点はあるのでしょうか。
リンスは4点(多元主義、イデオロギー、リーダーシップ、動員)において、権威主義体制は全体主義体制と異なる、と主張しました。
全体主義体制では基本的に政治的、社会的、経済的に体制とは異なる独自の団体は存在しません。つまり、ひとつの団体に集約されることが多いです。
一方、権威主義体制では体制が成立する以前に存在した団体が自由に動くことがあります。たとえば、宗教関連の組織が挙げられますね。
次に、全体主義体制は強力なイデオロギー、スローガンの下、国民を総動員することが特徴です。ナチス・ドイツのプロパガンダ映画を見れば、よくわかると思います。
権威主義体制の場合、確固としたイデオロギーがありそうで、実はない。国民の動員もそれほど行われません。国民は政治にあまり関心がなく、言い方を変えれば惰性で動いている感じでしょうか。
全体主義体制と権威主義体制の差異において、最もわかりやすいのは指導者のリーダーシップではないでしょうか。全体主義体制のリーダーはヒトラーのように強烈なキャラクターが特徴。
ザ「独裁者」という感じですね。そして、予測不可能な動き方をします。それに対して権威主義体制のリーダーは、どちらかというと「地味」。あくまでも法律の枠内で動くことも権威主義体制のリーダーの特徴です。
権威主義体制が提唱されたはいいが……
このように見ていくと、一概に「独裁者」とは言えないと思います。ところで、権威主義体制が提唱されるとひとつの問題が生じました。
そうです、世界のほとんどの非民主主義体制が権威主義体制に分類されることに。これではいかん、ということで細分化の議論が行われました。この話は次回に。