みなさん、こんにちは。今回はクロアチア語とセルビア語の違いを見ていきます。クロアチア語とセルビア語はユーゴ時代には「セルビア・クロアチア語」として一つの言語とみなされていました。
そのような歴史的背景を考えると、本当にクロアチア語とセルビア語は「違い」があるのでしょうか? 気になりますよね? それでは見ていきましょう。
まずはクロアチア語とセルビア語を聞こう
まずはクロアチア語とセルビア語を聞いてみましょう。本当は私が実演すればいいのですが、下手なのでYouTubeの力を借ります。
まずはクロアチア語です。
次にセルビア語
いかがでしょうか。パッと聞くと音の違いはなさそうな感じがしますね。クロアチア語とセルビア語はほぼ同じ言語です。ただし「違い」は存在します。以下の単語をチェックしましょう。
美しい:lijepo(クロアチア語)lepo(セルビア語)
ここ:Ovdje(クロアチア語)Ovde(セルビア語)
クロアチア語は上記のとおり「j」が入ります。クロアチア人の前でセルビア語読みをすると、クロアチア人は「jを入れて読むのがクロアチア語だよ」と教えてくれます。昔はクロアチアとセルビアで「j」を入れるか入れないかで揉めたものです。
クロアチア語とセルビア語では使う文字が違う
先ほどの動画の字幕を見て、何か気づきませんでしたか? そうです、クロアチア語とセルビア語は使う文字が異なります。クロアチア語はローマ文字を使いますが、セルビア語はロシア語と同じキリール文字を使います。
ただし、セルビアでもローマ字表記はよく見かけます。これについてセルビア人に質問すると「ローマ文字も使うけど、公文書はキリール文字だよ」と教えてくれました。
一方、クロアチアでは年配の方はキリール文字が読めますが、若い方はキリール文字は読めません。若いクロアチア人にキリール文字を見せると「クロアチアの学校ではキリール文字は教えてもらえないから」という答えでした。
クロアチア語とセルビア語を簡単に文字で確認しましょう。
クロアチア共和国:Republika Hrvatska
セルビア共和国:Република Србија
文法が微妙に異なる
クロアチア語とセルビア語の文法はほとんど同じですが、違うところもあります。例えば、以下の文章をご覧下さい。
今日、私は働けます。
クロアチア語:Ja mogu raditi danas.
セルビア語:Ja mogu da radim danas.
Raditiは「働く」という動詞、moguは「できる」英語でいうcanです。クロアチア語の場合はmoguの次は動詞の原形を用います。
一方、セルビア語はmoguの次にdaを付けて、da以下の動詞は主語にあわせて変化しなければなりません。ちなみに、ロシア語はクロアチア語のタイプです。
このようにクロアチア語とセルビア語は共通部分が多いのですが、違いも存在します。ユーゴ紛争のときは民族主義者が言葉の「違い」をクローズアップしたものです。
例えば、クロアチアの初代大統領、トゥジマンは演説の際、クロアチア語「らしさ」を出すために、クロアチアの古語をふんだんに使いました。しかし、演説を聞いた国民はチンプンカンプン、完全なトゥジマンの自己満足に終わったのです。平和に言葉を楽しみたいものですね。
参考文献
柴宜弘・山崎信一編著『セルビアを知るための60章』、2015年出版、明石書店。
柴宜弘・石田信一編著『クロアチアを知るための60章』、2013年出版、明石書店。
中島由美著『CDエクスプレス セルビア語 クロアチア語』、2002年出版、白水社。