みなさん、こんにちは。今回は映画のレビューをお送りします。紹介する映画は2018年12月22日(土)から上映される『シシリアン・ゴースト・ストーリー』です。何ともミステリアスな題名ですが、どのような映画でしょうか。さっそく、見ていきましょう。
緊張感あふれるラブストーリー
映画のタイトルは『シシリアン・ゴースト・ストーリー』ですが、パンフレットには「ラブストーリー」と書かれています。まず、この組み合わせから興味を惹かれるのでは。
ストーリーは1993年に実際に起きた”ある事件”を題材としています。ある日の放課後、ルナは同級生であるジュゼッペにラブレターを送るために彼の後を追います。2人は結ばれ、このまま順調に行くのかと思いきや、ジュゼッペは忽然と姿を消します。
ジュゼッペに一途な想いを持つルナ。しかし、ジュゼッペが忽然と姿を消したにも関わらず、周りの大人は知らんぷり。やがて、ルナとジュゼッペの間で幻想的な、そして悲惨な展開が繰り広げられます。
この映画はラブストーリーでありながら、最初から最後まで不思議な緊張感があります。緊張感がありながら幻想的な映像が入るので、現実か幻想かよくわからなくなる。そこが『シシリアン・ゴースト・ストーリー』の魅力かもしれません。
また、忘れてはならないのがルナ役のユリア・イェドリゴヴスカとジュゼッペ役のガエターノ・フェルナンデスの熱演。特にガエダーノ・フェルナンデスの視線がすばらしい。映画の重要なファクターである馬を連想させるすばらしい視線を持っています。
荒涼としたシチリアの大地が映画をさらに引き立てる
『シシリアン・ゴースト・ストーリー』というタイトルどおり、舞台はイタリアのシチリア島です。シチリア島はイタリア本土とは異なる歴史を持っています。ナポレオンのときに誕生した「両シチリア王国」など、高校の歴史教科書で思い出す人も多いかもしれません。
19世紀、シチリア島はイタリアの一部になりますが、発展したのは主に北部の地域。イタリアの南に位置するシチリア島は発展の流れに取り残され、マフィアが横行する島に変わりました。シチリアのマフィアといえば映画『ゴット・ファーザー』があまりにも有名ですが、今回も重要なファクターになっています。
シチリア島が持つ、そして独特な歴史が育んだ荒涼とした大地が映画に流れる緊張感を増幅させます。そして、時折見られる幻想的な自然の優しさ。このギャップにも注目したいところです。シチリア島に行ったことがある人は島の別な一面が見られるのではないでしょうか。
社会派映画という見方もできるかも
これはあくまでも個人的な意見ですが、『シシリアン・ゴースト・ストーリー』は社会派映画としても楽しめると思います。とんでもない事件が起きたのに、目をつむる大人たち。目をつむる理由のひとつとして、ジュゼッペの出自が挙げられます。
ここまであからさまではないかもしれませんが、私たちも映画に出てくる大人のように振舞っているかもしれません。世間体を気にして、本質を見ぬ人々・・・。映画を見ながら、何とも言えない不気味な雰囲気と妙な共感がせめぎ合うのは私だけではないと思います。
『シシリアン・ゴースト・ストーリー』の脚本家と監督は共にシチリアのパレルモ生まれ。当然のことながら、1993年の”あの事件”を知っています。今でも2人の脳裏に”あの事件”が脳裏に憑物のようにこびりついているとか。脚本家と監督の意図ではないかもしれませんが、私たちの社会に何かを訴えているようにも感じました。
いずれにせよ、話が進むにつれ、どんどん引き込まれる映画です。そして、誰かと語り合いたくなる映画です。どうぞ、年末に『シシリアン・ゴースト・ストーリー』を映画館で観てください。そして、共に語り合いましょう。
映画概要
タイトル:『シシリアン・ゴースト・ストーリー』
・配給:ミモザフィルムズ
・12月22日(土)、新宿シネマカリテほか全国順次公開