「未承認国家」ができる原因と現状を考察してみよう

ロシアと共に
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4月上旬、不幸にもアゼルバイジャンにある未承認国家「ナゴルノ・カラバフ共和国」にて戦闘がありました。

そもそも、なぜ中東欧・旧ソ連には未承認国家(国の体は成しているが、どの国からも承認されていない、もしくはわずかな国しか承認されていない)が多いのでしょうか。いくつかの本を読んだ上で私なりに考えてみました。

① 未承認国家のポイント1 国民国家へのこだわり

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沿ドニエストル共和国、南オセチア共和国、アブハジア共和国、クライナ・セルビア人共和国……過去も含めて、多くの未承認国家にはある共通点があります。

それは、それぞれ元は多民族の連邦国家に属していたこと。沿ドニエストル共和国、南オセチア共和国、アブハジア共和国はソビエト連邦、クライナ・セルビア人共和国はユーゴスラヴィアに属していました。1980年代末から1990年代にかけて、ソビエト連邦とユーゴスラビアが解体。

それぞれの連邦を構成していた共和国は独立を果たしました。その際、それぞれの共和国は「国民国家」(1国家1民族)を作るべく、主要民族に焦点を当てた政治を行いました。そして、それぞれの共和国に住んでいた少数民族は軽んじられていったのです。

「抑圧」を感じた少数民族は自分たちで「国づくり」を行ったのです。もちろん、少数民族が勝手に国家を作っても法的母国(元の共和国)は独立を認めるはずがありません。その結果、「未承認国家」ができたのです。

ただし、例外もあります。沿ドニエストル共和国はモルドバとルーマニアとの統合に反対する勢力が作った国です。つまり「民族」を掲げて運動したわけではないのです。また、沿ドニエストル共和国の国家樹立には第二次世界大戦のルーマニア兵の行動(記憶)も影響していると言われています。

沿ドニエストル共和国 モルドバ

アブハジア共和国、南オセチア共和国 ジョージア(グルジア)

クライナ・セルビア人共和国 クロアチア

アブハジア(緑) 南オセチア国旗

在沿ドニエストル共和国アブハジア・南オセチア大使館 

② 未承認国家のポイント2 民主主義の導入

「民主主義がなんで未承認国家とつながるの」そう思う方も多いでしょう。実は意外なカラクリが隠されているのです。社会主義時代はソ連もユーゴも共産党による一党独裁でした。

ざっくりした言い方をすると、全民族が集まるちゃんぽんみたいな政党だったのです。社会主義体制、連邦国家が崩壊すると、多くの独立した共和国は民主主義・多党制のシステムを導入しました。

ここで問題が生じたのです。多党制になる、というのは新たな政党ができるということ。その結果、それぞれの民族別に党ができてしまったのです。例えば、A党はA民族の利益を考える党、B党はB民族の利益を考える党という具合に。

特にこの流れはユーゴスラビアから独立した共和国で顕著でした。そして選挙を行うと、主要民族を支持基盤とする政党が勝ちます。

そうすると、主要民族にとって都合のいい法案だけ通ってしまうのです。A党が80%、B党が20%ならA民族に有利な法案が通ってしまいますね。この流れが予想されたので、少数民族は選挙をボイコットし、自分たちの「国家」を作ったのです。民主主義・多党制が皮肉にも国の分裂を招いたのです。

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③ 未承認国家のポイント3 ロシアの存在

地図で見れば分かる通り、未承認国家は本当に小さいです。「なぜ、こんな小さい国が生き残れるのだろう」と不思議に思う方も多いでしょう。現に、クライナ・セルビア人共和国はクロアチアの攻撃を受けてあっけなく崩壊しましたから。

現在、多くの未承認国家をサポートしているのが大国、ロシアです。実は未承認国家のうち、沿ドニエストル共和国やウクライナにある未承認国家はロシア人が国づくりに関わっています。

当然、ロシアとしては同胞を助ける意味でも、独立した共和国に影響力を行使する意味でも、軍事・経済あらゆる面でこれらの未承認国家をサポートしています。

一方、アブハジア共和国、南オセチア共和国はロシア人の国ではありません。アブハジアと南オセチアはジョージアから「独立」しています。

実は、ロシアとジョージアが敵対関係なのです。簡単にいえば「敵の敵は味方」という理屈で、ロシアはアブハジア共和国と南オセチア共和国をサポートしています。

ロシア政府はいろいろと理由を述べていますが、「旧ソ連に加盟していた共和国には影響力を残したい」というのが本音でしょう。

未承認国家は奥が深い

ざっくりした説明ですが、分かって頂けたでしょうか。未承認国家だけで一つの論文が書けてしまいます。また、別の角度で未承認国家を語りたいと思います。もしかすると、今後、新たな未承認国家が生まれるかもしれません。世界平和、世界政治を見る際に「未承認国家」をベースに調べるのも興味深いでしょう。

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