今回はハプスブルク帝国の通史、『ハプスブルク帝国』のレビューを書きます。この本、通史でありながら、新書サイズというのが何よりもうれしいポイント。
旧ハプスブルク帝国領の国々に行く際は、ぜひ『ハプスブルク帝国』を読むことを忘れずに。それでは、詳しく見ていきましょう。
① そもそも、ハプスブルク帝国の通史が書かれた本は少ない?
ヨーロッパ旅行はもちろんのこと、宝塚歌劇を見てハプスブルク帝国に興味を持った方も多いのではないでしょうか。ただ、本屋の歴史コーナーに行くとハプスブルク帝国の通史が書かれた本はなかなか見当たりません。
ハプスブルク帝国に関する本があったとしても、テーマを絞った専門書ばかり。もしくは写真ばかりの内容の浅い本が目立ちます。
ハプスブルク帝国の歴史は長く、しかも多民族国家だったので、通史を書くのがとても難しいのです。また、一般向けにわかりやすく書くのはもっと至難の業。
それをやってのけたのが、この『ハプスブルク帝国』です。新書サイズの通史が出版されただけでも、十分に意義深いと思います。
② 最新の研究に基づいている『ハプスブルク帝国』
「ハプスブルク帝国知ってるよー」とか「世界史で習った」という方も手に取って見ることをおすすめします。『ハプスブルク帝国』は最新の研究に基づいています。
そのため、今まで「当たり前」と思っていたことが、実は「違っていた」という箇所がたくさんあると思います。
たとえば、ウィーン会議に関して、このように書かれています。
『また「復古的」「反動的」ともよく言われるが、実際にはナポレオン戦争期に生じた変革の多くが追認された。近年では、こうした会議の成果を、穏健な自由主義者と改革に理解のある保守主義者による合意形成の産物として評価する動きも現れている』257頁
これだけ読んでも、ウィーン会議のイメージが大きく変わることでしょう。このような新たな発見がたくさんあるので、楽しく読み進めることができます。
③ 『ハプスブルク帝国』は誰におすすめか
『ハプスブルク帝国』はズバリ歴史好きな方におすすめしたい本です。この本を読めば、複雑なハプスブルク帝国の実態がスッキリとわかるでしょう。
またオーストリア、チェコ、ハンガリーなどのハプスブルク帝国に属していた国々に旅される方にもおすすめしたい本です。
『ハプスブルク帝国』を読んだ後に、数々の建造物や展示物を見ると、おもしろさが倍増するはず。1,080円以上の価値が得られること、間違いありません。