ボスニア・ヴィシェグラードとアンドリッチの足跡をたどる

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セルビアのベオグラードからバスで6時間、ボスニア・ヘルツェゴビナのヴィシェグラードに寄りました。旅行記を書く前にボスニア・ヘルツェゴビナの現状について簡単に説明したいと思います。

ボスニアには3つの民族が暮らしています。ボシュニャク人(イスラーム教)、セルビア人(正教)、クロアチア人(カトリック)です。

ボスニアは一つの国ですが、二つの独立性の高い自治組織によって構成されています。国土の49%を占めている、セルビア人を中心としたスルプスカ共和国と国土の51%を占め、ボシュニャク人とクロアチア人で構成される「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」です。

今回、紹介するヴィシェグラードはスルプスカ共和国に属します。

ボスニア・ヘルツェゴビナ=ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦(ボシュニャク人・クロアチア人)+スルプスカ共和国(セルビア人)

小説「ドリナの橋」の世界

筆者撮影

筆者撮影

ヴィシェグラードはノーベル賞作家、イヴォ・アンドリッチの小説『ドリナの橋』の舞台になったところです。『ドリナの橋』はソコルル・メフメト・パシャ橋を土台に16世紀から第一次世界大戦までを描いた歴史小説です。

私も読みましたが(とか言いながら、まだ半分で止まっていますが)、時代ごとに話は変わりまずが、ストーリーの連続性が感じられる大河小説です。サラエボに行く前に小説の世界に浸ってみるのも悪くないかなと思いました。

宿を11時に出て、早速、ソコルル・メフメト・パシャ橋に行きました。小説同様、堂々としています。ドリナ川はゆっくりと何事もなかったかのように流れています。しかし、20年前のボスニア紛争では、この橋から突き落とされて殺されるという悲劇的な出来事も起こりました。

ここにはセルビア人とボシュニャク人が暮らしていましたが、ここに住んでいたボシュニャク人は殺されるか、この地を追われることになったのです。再び、多様な民族が暮らせる町になるのでしょうか。小説の世界に浸りながら、祈るようにして渡りました。

筆者撮影

筆者撮影

橋を渡った後、イヴォ・アンドリッチの家に行きました。本当に橋の近くにあり、小さな家です。毎日、橋を見たからこそ、あれだけ堂々とした小説が書けるのだと思います。

ボスニアは「橋」と共に歩んできた国と言っても過言ではないと思います。案外、「橋」を核にすれば、3つの民族が共存できるヒントが得られるのではないでしょうか。

ボスニア・ヘルツェゴビナの国旗がない

筆者撮影

筆者撮影

ヴィシェグラードにはボスニア・ヘルツェゴビナ領でありながら、ボスニアの国旗は全くと言っていいほど、ありません。その代わりに見られるのは、3色旗のスルプスカ共和国の国旗です。

また、この町ではボスニアの通貨マルカとセルビアの通貨ディナールが使えます。セルビアではありませんが、本当に「セルビア人の国」という状態になっています。この状態だと、なかなかボスニア人は戻れないでしょう。

セルビア人、全てが他の民族を嫌っているわけではない

17308917_1358331860854999_1461690358660822976_n今回、一般家庭の家に泊まりました。ホストはセルビア人。慎重に話を聞いてみると、ユーゴスラヴィアが崩壊しバラバラになったことを悲しんでいました。私が、再び多様な民族が平和に仲良く暮らせる国になって欲しい、と伝えると深く頷いてくれました。

よくボスニアでは未だに民族同士がいがみ合っていると言われています。残念ながら、これは事実です。肌でも感じられます。しかし、全ての人が憎悪を持っているとは限らないということを伝えたいのです。

ただし、コソボの話になると難しい顔になりました。「コソボはセルビア人のハートだ。なぜ、ハートを二束三文で渡さないといけないのか」という言葉が心に刺さりました。

アルバニア系住民の独立したい気持ちも分かります。もっと時間をかけて、両民族がある程度、納得できる形にならなかったことが残念でなりません。

ヴィシェグラードへの行き方

ベオグラードで見せつけられた時刻表

ベオグラードで見せつけられた時刻表

最後にヴィシェグラードへの行き方を解説します。東サラエボバスターミナルとベオグラードの間にヴィシェグラードがありますので、東サラエボ、ベオグラード両方からアクセスできます。

私はベオグラード側から入りました。ベオグラードからヴィシェグラード方面行きのバスは1日4本あります。ところが、ベオグラード発、朝の7時の次は夕方の17時40分までバスがありません。本当に謎なダイヤです。

なお、ベオグラードからヴィシェグラードまでは6時間かかります。したがって、7時発の便をおすすめします。

ヴィシェグラードから東サラエボへは、バスで3~4時間くらいです。ただし、バスによって乗り場が異なりますので、必ずインフォメーションセンターで確認しましょう。

(10月26日)

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ヴィシェグラードの位置 

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